2006年度高エネルギー物理学概論 Iの講義内容


第1回: 4月 17日(月) (15:30-)

教科書の説明と輪講形式での進め方について説明・議論した。 当初考えていた 「Weak Interactions」 (E.D.Commins, McGraw-Hill Inc.) は、良い教科書であるが 1981年のものでやや古いので、学生の意向も考慮して 第一章の概観の部分をやったあと、「Quarks and Leptons」(F.Halzen and A.Martin, John Wiley & Sons, Inc.)の Weak Interaction 関連の部分に 移行することにした。

第2回: 4 月 24日(月) (13:30-)

「Weak Interactions」Sec.1.1 〜 1.2
β崩壊のフェルミ理論 および 種々の弱い相互作用

弱い相互作用の導入として、β崩壊に対するフェルミ理論の説明 及び 他の弱い相互作用の紹介

第3回:5 月 8日(月) (13:30-)

「Weak Interactions」Sec.1.3 〜1.5
弱い相互作用の実効的ラグランジアン、パリティ対称性の破れ、 弱い相互作用の分類

レプトンおよび核子のカレントの導入による4フェルミ相互作用の ラグランジアンの説明、弱い相互作用を分類することにより弱い相互作用 を一通り概観した。

第4回: 5 月 15日(月) (13:30-)

「Quarks & Leptons」 Chap.3
反粒子

教科書を「Quarks & Leptons」に移して、弱い相互作用の遷移確率等を 実際に計算するために必要な基礎を学ぶため、第三章よりはじめた。 非相対論的運動方程式より始め、ローレンツ共変ベクトルを導入し、 相対論的運動方程式により、反粒子の解の存在を説明

第5回: 5 月 22日(月) (15:00-)

「Quarks & Leptons」 Chap.4, 4.1
スピンを持たない粒子の量子電磁力学:電磁場中の「電子」

クライン・ゴルドン方程式に電磁ポテンシャルを入れることにより 電磁相互作用を記述し、電磁カレントを導出。

第6回: 5 月 29日(月) (13:30-)

「Quarks & Leptons」 Chap.4, 4.2-4.9
スピンを持たない粒子の散乱断面積

前に導入したスピンを持たない粒子の電磁相作用方程式を用いて 二粒子の散乱断面積を計算した。ローレンツ不変なマンデルシュタム変数 を導入し、s-, t-, u-チャンネルの散乱断面積が同じ形で表されること を理解。

第7回: 6 月 5日(月) (15:00-)

「Quarks & Leptons」 Chap.5, 5.1-5
ディラック方程式:

相対論的なディラック方程式を導入し、γ行列、保存カレント、 自由スピノール、反粒子等を導き出した。ヘリシティの作用因子の定義 と性質の理解ができていなかったので次回の宿題とした。

第8回: 6 月 12日(月) (14:30-)

「Quarks & Leptons」 Chap.5, 5.3, 5.6-7 ; 6. 6.1
双線形共変変数、二要素ニュートリノ、半スピン粒子の電磁力学

一般的なカレントを構築するために、双線形共変変数を導入しその 性質を理解した。質量がゼロの時に、4要素のスピノールは2要素の スピノールになり、ニュトリノを記述することを理解。 六章に進み、ディラック方程式に相互作用項を加えスピノールの 電磁カレントを導出した。

第9回: 6 月 19日(月) (13:30-)

「Quarks & Leptons」 Chap.6, 6.2-5
γ行列のトレース理論、メラー散乱、電子・ミュオン散乱と 電子・陽電子消滅反応

前述のスピノールの電磁カレントによりメラー散乱、電子・ミュオン散乱と 電子・陽電子消滅反応の散乱断面積を計算した。 そのために必要なγ行列の トレース理論(公式)を学んだ。

第10回: 6 月 26日(月) (13:30-)

「Quarks & Leptons」 Chap.6, 6.6-8, 6.9-11
高エネルギーでのヘリシティ保存、電子・ミュオン散乱、光子偏極ベクトル

高エネルギーでのベクトル・カレントはヘリシティを保存することを導出。 その効果を電子・ミュオン散乱の断面積を計算して確認した。 また、プロパゲータの光子の性質を光子偏極ベクトル等により学んだ。

第11回: 7 月 10日(月) (13:30-)

「Quarks & Leptons」 Chap.6, 6.12-17 (6.14,15 skip)
質量のあるベクトル粒子、仮想電子、コンプトン散乱と電子・陽電子消滅 による二光子対生成反応

光子に質量がある場合を考え、質量のあるベクトル粒子の性質やプロパゲータ の形を導出(W 粒子に応用)。仮想電子や仮想ベクトル粒子のプロパゲータの iεを用いる積分手法の計算。 コンプトン散乱と電子・陽電子消滅による 二光子対生成反応の断面積を計算。 これで、弱い相互作用(V -> V-A)の計算 に必要な基礎が得られた。

第12回: 7 月 17日(月) (13:30-)

「Quarks & Leptons」 Chap.12, 12.2-
弱い相互作用:ミュオン崩壊

今までに得た知識を用いて弱い相互作用(V -> V-A)のカレントを導出し、 ミュオン崩壊の崩壊幅を計算した。


2006-Oct-3(Tue)
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