このページでは総研大院生の方にどのような生活を送っているかを紹介していただきました。以下は総研大院生の寺地秀師さんに書いていただいた文章です。
ある大学院生の生活
ここでは総研大の院生が毎週どんな研究生活を実際に送っているかを一部体験を交えつつ紹介したいと思います。
総研大は大学とはいっても学生たちの主な活動の場はそれぞれの専攻に対応した各大学共同利用機関(要するに研究所)です。素粒子原子核専攻の場合は高エネルギー加速器研究機構(KEK)ですね。ですから、一週間のライフスタイルも大学研究室のそれとは若干異なるかもしれません。
例えば理論系グループでは毎週月曜日と金曜日に研究室内のメンバーによる文献紹介があり、火曜日には外部から研究者を招いてのセミナーが定期的に開催されますが(週によっては火曜日以外にもさらに開かれることがあります)、これはおそらく他の大学研究室と比較してもかなり頻度は高いことでしょう。セミナーには結構、国内外の著名な研究者が訪れたりもするんですよ。頻度の高さは、研究所自体の規模の大きさや在籍する研究者の数の多さもその理由だとは思いますが、ここがいかに研究活動の活発な所であるかを示すひとつの良い基準ともなるでしょう。
これは研究所というよりはむしろ総研大の特色なのですが、ここでは毎週授業があります。ちゃんとした授業です。普通、大学院の博士後期課程ともなると、カリキュラム上には履修すべき科目が存在していたとしても、実際には授業が行われずに単位だけ与えられるという場合が多いと聞きます。日本ではほとんどの大学に当てはまることではないでしょうか。でも、欧米ではドクターコースにもしっかりと授業があって、一から鍛え直されるそうです。だから日本の研究者は欧米に比べて基礎がしっかりしていないなんていう批判も時々耳にします。そこで総研大では、そのような現状もふまえて「ちゃんとした」授業が開講されている訳です。確かに名目上は学部4年間と博士前期の2年間で一通りのことを学んだことになっているものの、実際はあやふやな理解ですましている分野や勘違いして覚えていることが結構たくさんあるものです。それに、以前はチンプンカンプンだったけどある程度勉強が進んでからもう一度やり直したら案外すんなりと理解できた、なんて事よくあるでしょう? だから博士後期で授業を受けるというのはとても意味のある事なんだと思います。総研大は人数が少ないので授業は必然的に少人数制になりますし、どことなくアットホームな雰囲気なので気軽に質問できます。
セミナーも授業も無い時は、自分の研究課題に取り組みます。これは他の大学の院生と同じですね。ただ、他の大学に比べて総研大のスタッフは非常に丁寧に指導してくれているように思います。それはおそらくは総研大は学生の数に対してスタッフの数が多いからだと思いますけど。また、ここは研究所なだけあって、ポスドク等の若手研究者は多いです。おかげで議論の相手は不足しません。時には飯食ってるときにも白熱した議論が繰り広げられます。
もちろん四六時中研究ばかりしている訳でもありませんよ。時には息抜きも必要なのです。ここの研究室では毎週金曜日の午後に「お菓子の会」と呼ばれるお茶会が催されます。これはスタッフの人達が出資したお金で"お菓子係"の人が近所のスーパー等でお菓子を買ってきて、それをみんなで味わうというものです。一週間のうちで一番、研究室が和やかな雰囲気に包まれる時間ですね。
まぁ、そんなこんなで一週間は過ぎていく訳です。もちろんここで紹介した一週間はこの文章を書いている僕の一週間です。もし無事に入学を果たせたなら、その時は、あなたはあなたの一週間を探して見つけてくださいね。
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