総研大(大学院)素粒子原子核専攻
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入学者に求めるもの
素粒子理論を志望する方に期待する最低限の学力・資質など

当専攻は平成18年度から5年一貫制博士課程に移行します。従って、学部卒(相当)の方が博士課程一年次から入学する場合と、修士課程修了(相当)の方が博士課程三年次から入学する場合とがありますが、以下に述べる事は断りがない限り、どちらの場合にも当てはまる事として、お読み下さい。

まず必要なもの、それはもちろん熱意です。物質や宇宙の究極を探りたい、アインシュタインのような大発見をしたい、皆それぞれ大きな希望を持っていると思います。しかし、これが逆に落とし穴にもなりうる事を、知っておいていただきたいと思います。素粒子理論は、アインシュタインの時代からは大きく変わりました。研究者の数も増え、必要となる基礎知識も莫大に増えています。素粒子論に対して過度の期待をしてしまうと、基礎知識を身につけないうちに、精魂尽き果ててしまうことになります。もちろん基礎知識を身につけた暁には、大きな夢に向けた長期的ビジョンを持つことが求められますが、幅広く深い専門知識と冷静な観察力無しには、どのような研究も遂行する事はできません。

熱意以上に大切なもの、それは、現実を見据える冷静さと物理学全般に対する幅広い興味です。素粒子物理学は、その名の通り物理科学です。たとえ物質や宇宙の根源を理解したいという強い熱意を持っていても、物理学に興味を持てない方が素粒子物理を続ける事は不可能です。

他分野から転向された方で成功する人は、以前の分野でも一所懸命、勉強、研究を行ってきた人です。他分野から転向して入学を希望する方の面接では、まず前の分野に関する熱意や何を学んだのか、を聞きます。そこから得たものが非常にしっかりしている場合、素粒子論へ転向しても成功する可能性が高くなります。逆に、前の分野でいい加減な基礎しか身につけられなかった場合には、素粒子論へ転向しても、途中で幻想と現実の違いに戸惑い、ドロップアウトしてしまう事になりかねません。

修士課程に引き続き素粒子理論の研究を希望する方の場合、既に素粒子理論の研究の現状は、ある程度知っているでしょう。また素粒子理論の中でも、自分がどのような方向に興味があるのか、多少はわかっていると思います。しかしこの場合も、決して狭い範囲だけにしか興味を持たない事のないようにしてください。KEKの理論系グループでは、素粒子現象論から超対称性を使った統一理論、超弦理論、そして格子ゲージ理論による数値シミュレーションと幅広い研究が行われ、お互いに強く関連しあっています。自分の興味を持ちつつも、幅広く知識を吸収していける方を、こちらでは希望しています。

素粒子物理学は、ある意味で一つの絶頂期を過ぎています。新しい粒子が次々に発見され、それを統一的に理解する枠組みが完成したのは、もはや30年近くも前の話です。理論的にも超弦理論が完成し、その理解が大きく進んでから10年近く経っています。これからも、今までの流れの延長線上に大きな発展も考えられます。しかし、それ以上に素粒子理論で今必要とされているのは、新しい枠組みを作るブレークスルーです。このような時に必要なのは、素粒子理論がどのような方向へ動いていっても、ついていけるだけの幅広い基礎知識を持った人材なのです。

それでは、より具体的に、総研大(素粒子理論)に入学を希望する方が、必要最低限持っていなければならない基礎知識を列挙しましょう。

  1. (解析)力学、電磁気学、量子力学、熱統計力学、相対論など、学部の物理学科で習うような物理の基礎知識
    どのような教科書で勉強されても構いませんが、これらの基礎知識は、すべての経歴の方に要求されます。一例としては、与えられた物理系に対して、ハミルトニアンまたはラグランジアンをすぐに求められ、そこから運動方程式が導けること。マクスウェル方程式を書き下し、その物理的意味を説明できること。簡単なポテンシャル中の量子力学的一体問題が解けること。分配関数から熱力学的量が計算できること。但しこれらはあくまでも一例であり、上記の分野に関する知識は、あらゆる物理学の基礎となります。

  2. 素粒子物理学全般に対する興味
    不必要な幻想を抱かないためにも、素粒子物理学に対する正しい理解ができている必要があります。素粒子物理学は、もともと「素粒子」に関する学問です。宇宙の根源を求める場合でも、その基礎は粒子にあります。面接の時点では、特に多くの知識は要求しません。トップクオークの質量を知らなくても構いません。それより重要なのは、そういったものに対して目を閉ざさないことです。入学の時点で、不必要に興味の幅を狭くすることは、入学後の学習において大きなマイナス要因となります。

  3. 場の理論の基礎 (既に修士課程を終えた方のみ)
    場の理論は素粒子物理学の基礎であり、これ無くしては、何も研究することができません。そこで、場の理論の基礎は原則として、当専攻博士課程3年次から入学される方に要求されます。内容としては、ディラック方程式、場の量子化、簡単な摂動計算、経路積分などです。特に修士課程で素粒子理論を専攻し学習してきた方の場合は、場の理論の知識がどこまでしっかり身についているのかを面接で質問します。具体的には、コンプトン散乱などの摂動計算やゲージ不変性、ディラック方程式などに関してしっかり理解していることが要求されます。新しく分野を転向する方の場合は、そこまで深い場の理論の知識は要求しませんが、簡単な場の量子化やディラック方程式に関しては、知っていることを望みます。但し、それ以上に、以前の分野でやってきたことの理解度が十分深いかどうかを重視します。
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