【研究分野】 ハドロン理論、ハドロンや原子核の内部構造に関する研究 【研究内容】 核子は基本粒子であるクォークやグルーオンから構成されていることは知られている。核子やその集合体である原子核をクォーク・グルーオン物理の立場で詳細に理解することは、現在の標準理論を超える現象を発見するために、重イオン核反応によってクォーク・グルーオンプラズマ状態を発見するために、さらに高エネルギー領域における核子や原子核の基本的構造のメカニズムを解明するために重要である。過去10年間、原子核や核子の構造を理解するために、クォーク・グルーオン分布関数に関する研究を行った。研究の詳細は個人のホームページに記載されている。
ハドロン物理特にエキゾチックなハドロンの研究 有限温度・有限密度におけるハドロン・核物質の研究
極限的な状況におけるハドロン物理に興味を持っています。例えば、非常に高い エネルギーでの陽子の散乱では、陽子が3つのクォークからなるという常識が通 用しなくなってしまいます。どうなるかというと、グルーオンという、クォーク とクォークを結び付けている糊の役割をしている粒子がたくさん生成されて、そ のグルーオンの塊のように見えるのです。従って、通常の陽子では理解できない ような現象がいくつも出てきます。そういったことの理論的研究を行っていま す。また、密度をどんどんと大きくしていくと、陽子などに束縛されている クォークやグルーオンが解放されると考えられており、さらに、温度が低ければ クォークが一種の超伝導を起こすと予想されています。この時に起こる様々な現 象にも興味を持っています。このように通常の我々の世界ではなかなか存在しな いような状況を考えることの重要な利点は、極限的な状況下ではクォークとグ ルーオンの相互作用が弱くなるという「漸近的自由性」があるために、かなり解 析的に理解できるという点です。また、これらの極限的な状況は、単なるアカデ ミックな問題ではなく、最近では超高エネルギー散乱実験や、超相対論的重イオ ン衝突実験などで重要な視点であると考えられています。このような研究によっ て、我々のハドロンに対する理解や概念は、確実に広く、深くなっています。
軽い原子核では多彩な構造が現れます。陽子・中性子数の変化に伴い、 球形から楕円形に変形したりまたは小さな塊に分かれる(クラスター構造) など、調べていて面白いものです。 最近はこのような軽い原子核にストレンジネス・クォークを持つ粒子 (ハイペロンΛ,ΣやK−中間子)が加わった原子核に関心があります。 そこではこれまでの原子核では見られなかったような現象が現れると 考えられています。特にK−中間子が加わったK中間子原子核は大変面白い 原子核です。K−中間子と陽子や中性子の間には非常に強い引力が働くので、 その周りに陽子や中性子が引き寄せられます。その結果、普通の原子核には 現れない奇妙な構造が現れたり、また非常に密度の高い状態が形成されると 考えられます。原子核内に形成される高密度状態はハドロン物理においても 興味深く、現在はそのような観点からK中間子原子核を研究しているところです。